道化師の長き睫毛に風花す
道化師の長き睫毛に風花す みのる
人通りの多い街中の交差点でピエロの扮装をした人がポルノ映画のプラカードを担いで立っていた。
バブル景気が弾けて失職する人も多かったので、彼もその一人であったかも知れない。
突然舞い出した風花が長いつけ睫毛に留まったのを見て一瞬滑稽だなと感じて立ち止まった。
やがて睫毛の雪を拭う様子もなく立ちすくんでいるその姿になんとも言えない悲哀を覚えたのをいまも鮮明に思い出す。
あるとき、大先輩が著名誌の鑑賞欄に、芭蕉翁の「おもしろうてやがて悲しき鵜舟かな」に通じる現代の名句だと賞めてくださった記事を発見した。
狙って詠んだわけでもなく天啓のように授かった句なので、嬉しいような恥ずかしいような複雑な気分だった。
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