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エッセイブログ / やまだみのる

下萌に碑あり宮水発祥地

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下萌に碑あり宮水発祥地 みのる

兵庫県の西郷、御影郷、魚崎郷、西宮郷、今津郷の5つの地域を総称して灘五郷と呼ばれている。

西宮郷は西宮神社を南へと下ったあたりにあって、この地に清酒の白鹿ブランドを展開する辰馬本家酒造がある。

みのるの勤務先の創設者であった小林一三翁と辰馬家とはご縁が深かった…と資料で知ったのでそのご縁を頼みにダメ元で西宮の辰馬本社を訪ねた。

著名俳人を案内して寒造りの俳句を詠みたいのでぜひ工場見学をと嘆願したところ快く承知してもらえたのである。

紫峡師ご夫妻や淡路島の大星たかしさんほかの重鎮を引率しての吟行に緊張したが、工場近くにある社員保養所を句会場にと提供いただき、帰りには全員に搾りたての酒粕を家苞にと手配してくださり、至れり尽せりのおもてなしに心あたたまる一日となった。

酒造りに欠かせない名水「宮水」が湧出する西宮市久保町には「宮水発祥之地」の碑が建立されている。

揚句はその時の酒蔵吟行の途次に立ち寄って詠んだもので、伝統俳句協会発行の兵庫吟行案内という書に例句として掲載していただいた。

阪神淡路大震災で倒壊した蔵を見た蔵人たちは、宮水井戸に駈けつけ涸れずに水を湛えている井戸を見て「また酒を造ることができる」と涙を流したという。

そしてこの宮水が、震災で寸断された水道水の代わりとしても利用され、地域の人達の命の水となったことは今も語り草となっている。

春になれば忘れずに大地に萌出る草々は復活の命の証しであり、天変地異に脅かされても涸れることのなかった宮水は永遠の命の尊さを教えているのではないだろうか。

そしてその命を十七文字に写し取る行為こそが伝統俳句の根源であり、ゴスペル俳句なのだと私は信じたいのである。

 

 

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