四時随順

俳句とエッセイ / やまだみのる

  • 玻璃内は冬日天国海展け

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    玻璃内は冬日天国海展け  みのる

    小路紫峡師に特訓を受けていた初学時代、週末になると須磨浦公園に出かけては句を詠んだ。あちこち吟行地をかえて移動するのは時間がもったいない気がしたので車で15分ほどで行けるここを道場だと決めて通い続けた。今から三十数年前のことである。

    冬の時期はじっと立っていると体が冷えて心も鈍くなり頭も回転しなくなる。そんなときは須磨観光ハウスにエスケープして温かいコーヒーをいただきながら推敲する。レストランの大きな玻璃窓からは須磨の海が覧けていて、たいていは穏やかな表情で縮緬波をたたんでいる。

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  • 生涯の一転機とし日記果つ

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    生涯の一転機とし日記果つ  みのる

    月並みな話題になるが人の生涯においてターニングポイントになるシーンは何度かある。今がまさにその時と感じるときもあるけれども、たいていは来し方を振り返って “あのときがそうだったかもしれない…” と思うことのほうが多い。

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  • ミサの鐘ひびき黄落急ぎけり

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    ミサの鐘ひびき黄落急ぎけり  みのる

    散歩道にある公園の大公孫樹もすっかり葉を落として天辺に青空が透けている。名所の燃えるような紅葉もわるくはないけれど、目立たない場所で人知れず散りつぎながら大地を覆っていく大公孫樹の黄落のほうが私の好みです。

    散っても散っても尽きることがないかと思われるころが一番美しい。やがて次第に疎になっていく梢をうち仰いでいるとゆったりとした季節の移ろいを感じる。

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  • 舎利塔の霊やすかれと山粧ふ

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    舎利塔の霊やすかれと山粧ふ  みのる

    JR広島駅の北側に見える二葉山の仏舎利塔は1966年(昭和41年)世界の恒久平和を念願し、原子爆弾の犠牲者の冥福を祈るために建立されたという。とても特徴的な形をしていて紅葉した山の頂上に白銀のごとく尖る姿はとても印象的だ。

    あの日から六十数年というときを経て街の風景や自然もすっかり復興した。昭和後期、平成と平穏な時代がつづき、この平和は永遠につづくものだと思うくらい幸せだったのに、昨今の世界情勢を見聞きしていると俄に不安が募る。

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  • 松天へ傾ぎ紅葉は池の面へ

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    松天へ傾ぎ紅葉は池の面へ  みのる

    俳句の学びを初めて七年が過ぎたころ紫峡先生から男性だけの吟行句会を発足せよとの指示が出ました。手元の資料を調べてみると平成二年二月に須磨離宮公園で第一回涼風句会が行われています。紫峡先生64歳、みのる47歳、いまから27年前のお話です。

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