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大仏の御手をこぼれて寒雀
大仏の御手をこぼれて寒雀 みのる
四温晴の一と日を得て佳句を授からんと能福寺の兵庫大仏を訪ねた。
身の丈11m、青空を背に堂々とそびえるそれは日本三大仏の一つと称される。
青銅製と聞くが日に映えた全身は白がねのようだ。
膝の上に置かれた大きな御手の窪のなかで寒雀たちが賑やかに遊んでいる。
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道化師の長き睫毛に風花す
道化師の長き睫毛に風花す みのる
人通りの多い街中の交差点でピエロの扮装をした人がポルノ映画のプラカードを担いで立っていた。
バブル景気が弾けて失職する人も多かったので、彼もその一人であったかも知れない。
突然舞い出した風花が長いつけ睫毛に留まったのを見て一瞬滑稽だなと感じて立ち止まった。
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猫の目のごとくに冬日ひろがりぬ
猫の目のごとくに冬日ひろがりぬ みのる
昭和25年、私が小学1年生のころ「たま」と名づけた茶トラ猫を飼っていた。
野良の子猫が屋根から降りられなくなって鳴いているのを見つけたので、近所のおじさんに頼んで梯子で助けてもらったのだ。
これが「たま」との出会いであった。
両親に姉二人兄一人と末っ子の私の6人家族、戦後の貧しい生活の中で兵隊経験のある厳格な父がなぜ仔猫を飼うことを許してくれたのかはよく覚えていない。
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門波蹴散らせていかなご船戻る
門波蹴散らせていかなご船戻る みのる
今年は2月26日に、兵庫漁協のいかなご漁が解禁になった。
ここ二年ほど極端な不漁が続き、解禁日も3月7日と例年より1週間以上遅かったけれどやっと回復したのかと喜んだ。ところがたまたま昨日、明石漁港の糶を吟行したので漁師さんに聞いてみたら解禁日は豊漁であったけれど二日目には落ち込んで糶り値も初日より高騰しているという。
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蝋梅に綺羅の海光とどきけり
蝋梅に綺羅の海光とどきけり みのる
今から三十年ほどまえ四六時中俳句脳だったころの話である。
週末の朝、いつものように須磨浦公園へ吟行に出かけた。その日は温かい玉日和で須磨の海は眩しい日差しを弾きながら穏やかに縮緬波を畳んでいた。そろそろ観光ホテルの庭の蝋梅が咲いているころだと足を運ぶと既に先客があった。その人はじっと蝋梅と対峙して微動だに身じろがない。
それが恩師の紫峡先生だとすぐに気づいたけれど真剣な眼差しに近寄りがたいものを直感したので声をかけずにそっとその場を離れた。その時に見た先生のお姿はいまも瞼の裏に鮮烈に焼きついている。
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