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時計台聖夜の針を重ねけり
時計台聖夜の針を重ねけり みのる
聖歌隊が「ハレルヤ」と歌いおさめるとやがて手に手にペンライトを持ってキャロリングに出発する。星空高く聖夜を刻む天文台の大時計を仰ぐととても満たされた気分になり手足の悴むのも忘れる。
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玻璃窓をノックしてをる冬芽かな
玻璃窓をノックしてをる冬芽かな みのる
粗大ゴミにはなりたくない…と思いつつ、家内が掃除を始めると何となく居心地が悪くなる。
自宅から車で10分ほどの距離に須磨浦公園がある。家に篭っていたのでは俳句が出来ないと勇んで吟行に出たものの冷たい海風が容赦なく吹き付け結局1時間と持たずに異人館風の観光ホテルへエスケープ。あつあつの甘酒をすすりながらようやく一息ついた。窓の外には桜木立があるが、今はすっかり裸木となってその梢越しに須磨の海が展けている。白い三角波が風に立ち騒ぎ万の白兎が跳んでいるようだ。
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炉の埃天井遊泳して落ちず
炉の埃天井遊泳して落ちず みのる
真っ白な仙人髭をたずさえたあるじは卆寿だという。
ダム建設で水底となる旧家が移築され千年家史跡として公開されている。煤光りする大きな梁、両手で一抱えしても足りないほどの大黒柱、その柱についている刀傷には謂れがあるという。 広い板畳の部屋の真ん中には泰然と大炉があって、いにしえの生活ぶりを偲ばせてくれる。
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おでん酒企業戦士の彼悼む
おでん酒企業戦士の彼悼む みのる
突然の訃報に思わず神様を疑った。
俳句仲間で親友だった彼は銀行勤めで一歳年下。企業の泥戦の中で毒されているぼくに比べて真面目で誠実な彼の性格は一服の清涼剤のような存在であった。 バブル景気がはじけてから仕事が大変になったらしくほとんど会えなくなり、やがて不良債権処理のために故郷の四国へ転勤になったという情報が入ったのも人伝えであった。
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