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手花火のこれからといふ玉落つる
手花火のこれからといふ玉落つる みのる
豪快な打ち揚げ花火の音を聞くと血が騒ぐという人もいますが、ぼくは小さな線香花火に郷愁を感じます。
行水から上がると鼻の頭に天花粉を塗られ家族みんなで花火を楽しむのである。ぱちぱち爆ぜる火の粉が怖くて小さな手がおどおど震える。
それを包むようにして励ましてくれた温かい母の手の感触を今も覚えている。
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黙祷の一分間や蝉時雨
黙祷の一分間や蝉時雨 みのる
わたしの妻は被爆二世である。
帰省ついでにときどき平和公園を訪れて鎮魂碑を巡る。半世紀を経て美しい緑の楽園となった公園には観光客や修学旅行生たちが屯している。
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異な草と抜きて吾妹に叱らるる
異な草と抜きて吾妹に叱らるる みのる
夕べのはげしい雨が嘘のように晴れた。
目を覚ますと妻は庭の草引きに余念がない。「手伝って!」と促されて渋々庭へ出る。蒔かず肥料もやらないのにどうして草はこんなに元気がいいのだろう・・・ などと余計なことを考えていると突然悲鳴が上がった。 どうやら抜いてはいけないものまで引いてしまったらしい。
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不即不離心得てをり道をしへ
不即不離心得てをり道をしへ みのる
人間関係はガラス細工のようにもろい。ちょっとした誤解や行違いで直ぐに壊れる。特に信頼していた人に裏切られたときどうしようもないほど哀しくなる。
傷心を慰めようと山道を散策していると斑猫に出会った。近ずくと「合点!」と2、3メートル先へジャンプしては振り向く。繰り返されるその動作はまるで人付き合いの極意を教えてくれているようで、 じっと見ているうちになんだか拘りが消えてきて塞いだ気持ちが和んできた。
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端居して一雨ほしき夕べかな
端居して一雨ほしき夕べかな みのる
結婚して子供が産まれて、そしてマイホームを建てた。
高度成長期であったから不安はなかったけれど教育費や住宅ローンの返済のために働いているようなもの。悪戯に忙しい日々を重ねるだけの人生で満足なんだろうか黄昏どきになると何となく心が落ち着かず虚しさが募ってくる。
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